子どもたちに、もっと広い世界を見せたい。私が「おしごとスタディ」を作った理由

こんにちは。スクルー代表の犬塚です。

私たちは今、子どもたちがさまざまな仕事や社会の仕組みについて学ぶ「おしごとスタディ」というキャリア教育のサービスを作っています。(2026年9月16日現在はベータ版として試験運用中)

宇宙飛行士、建築士、獣医師、サッカー選手、医師といった仕事について学んだり、教育格差やサステナブルファッションといった社会の問題について考えたりするサービスです。

なぜ、私がこのサービスを作ろうと思ったのか。

今回は、少し個人的な話も含めて書いてみたいと思います。

おしごとスタディ

もっと早く知っていたら、違う選択をしていたかもしれない

実は私は、大学生の頃に建築家になりたいと思ったことがあります。

大学は工学部に通っていました。

建築も工学の一分野ですから、当時の私は漠然と「ここから建築家を目指せるのかな」と考えていました。

ところが、いざ調べてみると、自分が進んでいた道は建築士を目指す一般的なルートとは違っていました。

そのときに思ったんです。

「もっと早く知っていればよかったな」と。

もちろん、早く知っていたからといって、本当に建築家になっていたかは分かりません。

でも、少なくとも「建築家になる」という選択肢について、もっと早い段階で考えることはできたはずです。

振り返ってみると、私は子どもの頃、世の中にどんな仕事があるのかをほとんど知りませんでした。

身近な大人といえば家族や学校の先生くらい。仕事というものを垣間見る機会も、父親の仕事くらいしかありませんでした。

知らないものは、選択肢にはなりません。

これは、おしごとスタディを作ることになった一つの原体験だと思っています。

「体験を並べるだけ」では、子どもの体験は増えなかった

私はこれまで約10年間、子どもの習い事ポータル「スクルー」を運営してきました。

習い事ポータル スクルー

会社を立ち上げた当初から掲げている理念が、

「子どもの体験を10倍にする」

です。

世の中には、スポーツ、音楽、アート、プログラミングなど、子どもが経験できる素晴らしい体験がたくさんあります。

それらをたくさん集めて、子どもや保護者がアクセスしやすい状態にすれば、子どもの体験はもっと増える。

最初はそう考えていました。

でも、長くこの事業を続けていると、それだけでは足りないことがはっきりしてきました。

保護者の方にインタビューをすると、「子どもにもっといろいろなことを体験させたいですか?」という質問には、ほとんどの方が「はい」と答えます。

ところが、「では、なぜ実際にはやらないのでしょう?」と聞くと、

「お金がかかるから」

「時間がないから」

「近くにいいところがないから」

など、いろいろな理由が出てきます。

そこで質問を少し変えます。

「もし、お子さん自身が『ダンスをやりたい!』と言ったらどうしますか?」

すると、多くの保護者が「それならやらせます」と答えます。

さっきまで、お金や時間が問題と言っていたのに、子ども自身が本気でやりたいと言えば、なんとか時間を作り、お金も出そうとする。

この違いは何だろう。

考えていくうちに、一つの答えにたどり着きました。

体験を増やす前に、「やってみたい」という子どもの興味を育てる必要がある。

いくら目の前にたくさんの選択肢を並べても、子ども自身の心が動かなければ、体験にはつながりません。

逆に、「こんな人になりたい」「これ、かっこいい」「もっと知りたい」という気持ちが生まれれば、その先に「じゃあプログラミングをやってみたい」「絵を習ってみたい」といった行動が生まれます。

自分の未来を想像することが、今、目の前にある学びへの意欲につながる。

それなら、まず子どもたちに「世界の広さ」を見せることから始めよう。

それがおしごとスタディの出発点です。

私が見せたい「世界」は、職業図鑑ではない

ここでいう「世界の広さ」は、地理的な意味ではありません。

「大人になったとき、こんなにいろいろな生き方があるんだ」という世界の広さです。

私たちの社会には今でも、

いい成績を取る。

いい高校に入る。

いい大学に入る。

いい会社に就職する。

そして、経済的に成功する。

そんな一本のレールのような価値観が、まだ強く残っているように感じます。

もちろん、その生き方が幸せな人もいます。

一方で、田舎でのんびり暮らすことに幸せを感じる人もいるでしょう。家庭を大切にしながら穏やかに暮らしたい人もいる。会社を作って猛烈に働きたい人もいれば、好きなことを仕事にして最低限のお金があれば十分という人もいる。

人それぞれ性格も違えば、得意なことも違います。

当然、幸せの形も違うはずです。

だから子どもたちには、できるだけ早いうちに、

「世の中には、こんなにたくさんの選択肢があるんだ」

と知ってほしい。

そのうえで、自分に合った生き方を自分自身で選んでほしいと思っています。

「何になるか」より、「何に取り組みたいか」

だから、おしごとスタディでは職業だけを扱うつもりはありません。

教育格差やサステナブルファッションなど、社会で起きているさまざまな問題についても扱っています。

これは私自身、「職業の名前」だけで将来を考える必要はないと思っているからです。

例えば、教育格差について学んだ子が、

「生まれた環境によって、勉強したくても勉強できない子がいるのは嫌だ」

と感じたとします。

そのとき大切なのは、その子が「先生になろう」と決めることではないと思います。

「この問題を何とかしたい」

そう思うことの方が大切です。

問題への関わり方はいくらでもあります。

プログラマーとして教育サービスを作ってもいい。営業として広げてもいい。経営者として事業を作ってもいいし、NPOで活動してもいい。経理や事務として、その活動を支えることだってできます。

自分の得意なことを使って、自分が心を動かされた問題に取り組む。

そんな職業選択があってもいいのではないでしょうか。

AI時代だからこそ「学びたい」を育てたい

もう一つ、おしごとスタディで大切にしたいものがあります。

それが、学ぶ意欲と自己効力感です。

AIやロボットが急速に進化しているこれからの時代、私は、テストの点数が高いことだけに、これまでと同じ価値があり続けるとは思っていません。

もちろん、基礎的な学力や知識は大切です。

ただ、分からないことをAIが教えてくれたり、自分の能力をAIが補ってくれたりする時代になれば、学力の差の一部はテクノロジーによって埋められていくでしょう。

そのとき、より重要になるのは、

「これをやりたい」

「もっと知りたい」

「自分にもできるかもしれない」

「失敗したけれど、もう一度やってみよう」

という気持ちではないかと思っています。

意欲、自己効力感、そしてレジリエンス。

だから私は、子どもたちに勉強をさせるだけではなく、「学びたい」と思う理由そのものを育てたい。

そのためにも、まず世界を知る必要があります。

知らなかった仕事を知る。

知らなかった社会問題を知る。

そこで何かに心が動く。

「もっと知りたい」と思う。

その気持ちが、次の学びにつながっていく。

そんな循環を作りたいと思っています。

子どもの「興味のかけら」を、流してしまわない

そして最近、おしごとスタディを作りながら、もう一つ強く感じていることがあります。

体験は、放っておくと流れていってしまうということです。

例えば、子どもの頃に恐竜に夢中になったことがあったとします。

博物館で化石を見て、「すごい!」と思った。

でも、日常に戻れば、その感動も少しずつ薄れていきます。

もし、そのときの「面白い」「もっと知りたい」という気持ちを残しておいて、数年後にもう一度取り出すことができたらどうでしょう。

「そういえば自分、小さい頃からこういうことが好きだったな」

と、自分自身の興味に気づくきっかけになるかもしれません。

おしごとスタディには、自分の日常の出来事や感じたことを残す「体験ノート」という機能があります。

私はこれを、単なる日記ではなく、

「子どもの興味のかけらを集める装置」

にしたいと思っています。

仕事について学んだ記録も、社会問題について考えたことも、学校であったことも、家族で出かけて面白かったことも残していく。

そうして蓄積されたものを振り返ることで、「自分は何に心が動く人間なのか」が少しずつ見えてくる。

それも、おしごとスタディで実現したいことの一つです。

興味分析機能

一生の「天職」を見つけなくてもいい

おしごとスタディを使った子どもたちが10年後、20年後にどうなっていてほしいか。

私には、一つ思い浮かべている姿があります。

それは、

情熱を傾けられる「何か」を見つけて、それに取り組んでいる姿です。

ただし、その「何か」は一生同じものでなくてもいいと思っています。

3年間くらい夢中になって取り組んで、「自分はここまでやった」と納得したら、また次の何かを見つける。

そしてまた夢中になる。

そんなことを人生の中で何度も繰り返してもいい。

18歳や22歳のときに一生の仕事を決めて、その道をずっと歩き続けなければならないなんてことはありません。

自分が何に興味を持つのかを知り、自分で選び、挑戦する。

そして必要なら、また選び直す。

そんな人生を送ってほしいと思っています。

オンラインで知り、リアルな世界へ飛び出す

そして、おしごとスタディには、その先があります。

将来的には、オンラインでの学びとリアルな体験をつなげたいと思っています。

例えば、ある企業にクエストのスポンサーになってもらい、その企業の仕事について学んだ子どもたちが実際に会社を見学する。

社会問題について学んだ子が、その問題に関係するボランティアイベントに参加してみる。

オンラインで知る。

興味を持つ。

実際に体験する。

そこで感じたことを残す。

そして、また次の「やってみたい」が生まれる。

そんな循環を作りたい。

振り返ってみれば、これはスクルーを創業したときから掲げてきた「子どもの体験を10倍にする」という理念そのものなのかもしれません。

ただ体験の数を増やすのではない。

子ども自身の中に「やってみたい」を生み出し、その興味をリアルな体験につなげていく。

オンラインで世界を知り、リアルな世界へ飛び出していく。

その繰り返しによって、子どもたちの体験を10倍にする。

それが、私がおしごとスタディで実現したいことです。

おしごとスタディ

小学生向けキャリア教育アプリ
世の中のさまざまな仕事や社会問題を学ぶ学習アプリ

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