わかっていれば子育てが変わる?乳児期の「気質」とは

子育てでは、「どのように叱ればいいか分からない」「自分の子どもは順調に発達しているのだろうか」という育児不安、「子どもと一緒にいるとイライラする」「自分の時間が欲しい」という育児ストレスを感じる親も多いのではないでしょうか。

そのような状況では、親が子どもの発達を促すために適切な関わりをすることは困難になりがちで、子どもの発達が阻害されていく可能性があります。子どもの発達が阻害されることで、親の育児不安や育児ストレスはさらに高まり、その結果子どもの発達が阻害されるという悪循環に陥ることも。

そこで、今回は自己表現が上手にできない乳児期の子どもの「気質」と言われるものを紹介することで、乳児期の子供と接する時間が多いお母さんたちの役に立てればと思います。

赤ちゃんの気質とは?

乳児期の気質は、発達心理学で研究されてきた生まれつき赤ちゃんがもつ個性を分類したものです。トマスとチェス夫妻が1956年からニューヨークで始めた研究が元になっていて、乳幼児の示す行動特徴を9カテゴリーに分類し、さらにそのカテゴリーの組み合わせから子どもの「気質」を3タイプとそれ以外に分類しています。

気質、つまり行動特徴がある程度わかると、「この子はなんでこうなの!?」という漠然とした不安やストレスが減るだけでなく、「この子はこういう子だったのね」と余裕を持ってその子に合わせた行動を親が選べるようになります。発達心理学的にはそうなのですが、現実の子育ては文で書くほど単純ではありませんよね。少しでも楽になればいいなぁと思って書いています。

気質=変えられない性格なの?

気質は生まれ持ったものですが、性格は育っていく環境が大きく影響して形作られていきます。しかし、自己表現力が育っていない赤ちゃんは気質によって行動し、それによって親の反応が引き出され、親の反応=育つ環境として、赤ちゃんに影響を与えていきます。つまり気質は性格の元になる核の部分ともいえるのです。

大きく分かれる3つの気質

実は測定項目がとっっっても多いんです(元版は95項目もあります)。今も簡易版の研究がされていて、実際の育児相談の場などで時間をかけずに判断できるような質問紙が考えられています。ここでは分類される気質をあげますので、自分のお子さんの普段の行動からどれに近いかな?という感じで見てください。

1.扱いにくい子どもたち

回避+新たな刺激を避けようとする+環境の変化にゆっくりと慣れる+不機嫌であることが多い+泣く・笑うなど反応の度合いが強い

2.エンジンがかかりにくい子どもたち

新しい刺激を初めは避けるがやがて接近+環境の変化に対してゆっくりと順応していく

3.扱いやすい子どもたち

新しい刺激に対して積極的+身体機能が規則正しい+新しい環境に素早く順応する+機嫌がよい+泣き・笑いなどの反応が激しくない

親子の気質が互いに影響する

子どもの気質によって親がどう接したらいいのかが変わります。扱いやすい子どもに対しては親は安定した気持ちで接しやすいので、良好な親子関係を作りやすいのは想像できるでしょう。同じ扱いにくい子どもでも「何をしても泣いて困った子だ」ではなく「敏感な子だから気をつけよう」と注意深く接することで、親子関係や性格形成への影響は変わります。「なんでうちの子は」と思うのではなく、「この子はこういう子なのね」と受け止めてあげる親の心の余裕を作ることに気質の把握が一役買ってくれるのです。

 

参考文献
・史上最強図解 よくわかる発達心理学(ナツメ社)
・武井祐子、寺崎正治:乳児期における「気質」研究の動向
・中川敦子、木村由佳、鋤柄増根:乳児の行動のチェツクリス ト(IBQ-R)短 縮版の作成
・小椋たみ子:乳幼児期の気質の一貫性と性差
・稲垣由子:乳幼児期における心の育ち
・武井祐子、寺崎正治、水子学:養育者がとらえる幼児の行動特徴に関する研究―幼児気質質問紙と観察された行動との関係―
・武井祐子、寺崎正治、門田昌子:幼児気質質問紙作成の試み
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